融資相談をして、必要書類の作成を行い、審査を経てようやく融資実行。相談からの経過日数は早くて2週間~3週間ほどでしょうか。創業融資や、ちょっと厳しめの案件の場合だと面談なり必要書類の作成なりでもっとかかる事もあるでしょう。ようやく融資実行になってホッとする気持ちはわかりますし、手元資金が潤沢になるとお財布のひもが緩くなりますよね。ビジネスの資金なので、そんな事はないと思うかもしれませんが、お金に色は付けられません。普通預金口座に入ってくれば融資金も、既存の手元資金と一緒です。運転資金の場合、それを交際費で多少多く使おうが、いつもより仕入れで高価なものを仕入れようが、ある程度自由に使えます。
しかし、こと融資で調達したお金を絶対に使ってはいけない資金使途があります。これを知らずにやってしまうと今後の資金調達での影響は必至です。加えて、一括弁済を求められて資金繰りが急激に悪化という事になりかねませんので、是非知っておいてください。
1、資金使途違反
読んで字のごとく、融資申込の資金使途と違う事に融資金を使う事です。先ほどお金に色は付けられないと書きましたが、融資後に急に大きなお金を申込の際の資金使途と違う事に使った場合は怪しまれます。もちろん、過去に同じような支出があった上での事なら、そう言う風には見られないでしょう。しかし、急に多額の資金で他社の株を買ったり、会社の備品として高価な装飾品を買ったりすれば資金使途違反を疑われます。また設備資金で融資を受けたのに、送金先が見積書を出している会社と違う場合もそうでしょう。同じ機能の設備であれば値段の兼ね合いで購入先が変わる場合もあるかもしれません。その場合は必ず金融機関に報告しましょう。稟議書にはどこから購入するという事も記載されます。全く違う事に使う事は難しいかもしれません。融資実行日にそのまま振込するか、指定の振込日まで待って振込するかのパターンがあると思いますが、期日まで待ってから振込の場合は通知預金という別の口座で管理されることが多いと思いますので、その間自由には資金を使う事はできません。ただし金融機関によって違う場合もあるので、普通預金に入金されてしまうケースは怪しい支出をしないように注意が必要です。設備資金の振込までに他に大きな支払いがある場合は事前に金融機関に相談しましょう。
2、他社へ転貸資金
これは子会社や社長が代表を務める別会社などが多いかもしれません。他社の財務内容が悪く自力で資金調達できない場合に調子のいい会社で資金調達をして、そのお金を調子が悪い会社に貸し付ける行為です。理由は調子の好不調だけではないと思いますが、理由の如何を問わずやってはいけません。広い意味はではこれも資金使途違反のうちのひとつですね。A社で借入申込して、A社の運転資金で使う為に融資したものをB社に貸付したという流れです。これは決算書に必ず貸付金として載ってくるので、A社としても財務内容の毀損になりますし、資金使途違反がバレます。金融機関としては怪しく思っていても一括弁済を求められないケースもあるかもしれません。しかし次回以降本当にA社で資金調達をしたい時に影響が出る可能性が高いです。
3、旧債振り替え
既存の融資を新たに借りる資金で返済する事です。借換の事じゃないの?ダメなの?と思いますよね。保証協会付きの融資を保証協会の制度で借換する事は問題ありません。これは旧債振替えにあたりません。一方で、プロパー融資を保証協会付きの融資金で返済することはNGです。もしこのケースで旧債振替えをした場合、金融機関は保証協会付きの融資に関して返済が滞った時に代位弁済を受けられなくなるので、金融機関としても大打撃です。借り手としても、プロパーを返済して保証協会付きだけ残すことにあまりメリットはないとは思います。しかし、金融機関側としてはバレなければ未保全債権を回収できるので、メリットはありますよね。融資実行前に手元資金で既存融資を返済し、その後新たに融資実行となれば旧債振替には当たらないというグレーな方法もありますが、借り手からすれば保証協会枠を食う事になって、次回以降の融資のハードルも上がる可能性があります。ただし、上記に記載の通り借換の場合や複数融資の一本化等の場合は制度にもよりますが、実行可能の場合もありますので、そのような場合で旧債振替になる心配があるようであればご相談いただくのがいいかと思います。
4、代表者個人への貸付
これは2とほぼ同じですね。会社に貸付するか、個人に貸付するかの違いです。いずれにしても資金使途違反です。ただ場合によっては社長個人で資金が必要になる事もあるかもしれません。そのような時に一時的に借入することまで制限するものではないと個人的には考えますので、
①あまりに多額ならない事
②短期間で返済する事
③決算をまたがない事
④しっかり返済スケジュールを立てておく事
この辺りを守っていれば大きな問題になる事はないと思います。社長の場合は毎月の役員報酬との相殺もできるので、もし借りた場合は返済は確実に行うようにしましょう。
5、定期預金(定期積金)の作成
融資した資金を拘束性の定期預金に振り替えることを歩積両建といって禁止されています。融資実行後一定期間内に定期預金(定期積金)を作ろうとするとシステムでアラートが出ます。とはいっても、所定の承認を取れば作れなくはないのですが、そもそも会社で定期預金を作成する意味が乏しいので、あまりないケースかなぁと思います。定期積金であればあり得ますね。信金であれば積金はいつでも作らせようと声がけはしていると思いますので。
金融機関によっては運転資金であっても、融資実行後には資金を滞留させないで他行口座に移したりして資金移動を依頼するところもあるようです。私がいたところでは特に資金移動は求めてはいませんでした。これは金融機関によってスタンスが違うようですね。私がいた信金では融資金が滞留すればその分預金残高が上昇するので、その観点からすぐ資金移動されるよりはしばらくは滞留してもらう方が一石二鳥でおいしかったという側面があります。話は逸れましたが、定期性預金の作成は運転資金とはみなされないので、一定の制限があります。
総括
以上の様に、融資実行されて会社の口座に入金されたからと言ってなんでも自由に使っていいわけではありません。融資とは目的があって何に使うかを示したうえで、返済できる力がある事を認めてもらって実行されるものです。運転資金であればある程度自由に仕入れや経費として使う事はできますが、資金使途違反をしていなくても無駄遣いは禁物です。また事業に関係のない支出も避けるべきでしょう。お金の貸し借りは会社であっても個人であっても繊細に行うべきものです。貸し手も借り手も気持ちよく貸し借りを行う為にどんなことがNG行為なのか知っておくことは必要ですね!
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