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黒字決算で進行事業年度の試算表でも黒字なのに、融資が受けられないこともあります。


書類上では黒字を計上しており、一見業況も順調そうな会社。そんな会社でも融資が受けられない可能性があります。それはどんな会社でしょうか。新規で取引をする金融機関の場合、決算書を見せていただく場面で色々思う事がありますのでご紹介いたします。

基本的には金融機関の営業はお金を貸したいのです。自分の営業成績もあるので黒字の決算書が出てきたら、おっ!これは貸せる!と思うのです。しかし、よくよく見てみるとあれ?ちょっと怪しいなというところが出てくることもあるのです。それはどんなところか。下記のような決算書だと段々旗色が悪くなっていきます。

  1. 貸付金の金額が多い。
  2. 売掛金の金額が年商の割に多い
  3. 在庫の量が多い(滞留在庫がある)
  4. 現預金の額が極端に少ない
  5. 既に多額の借入をしている

他にも見るべきところはもっとあるのですが、ざっと見ていやだなぁと思うものが上記5項目です。

1~3については資産性が疑われる(回収懸念がある)ので、決算書が黒字でも金融機関側で引き戻しの作業をして出した実態の自己資本が毀損する又は債務超過になる可能性もあります。資本毀損で留まれば債務者区分も要注意先で留まる可能性が高いですが、債務超過になると債務者区分云々以前に担当者の時点で取り上げない可能性が高いと思います。一概には言えませんが通常3期分の決算書を用意してもらうのですが、実質債務超過の可能性が高い場合黒字であっても決算書を預かりもしないケースもあります。そのような場合は決算書の中身に何か問題があると判断してまず間違いないと思います。

4の現預金が極端に少ない場合も難しいケースがあります。このような企業の案件で保証協会に申請したことがありますが、現金が少なすぎることを指摘され否決されたことがあります。保証協会が使えないので、当然ながらプロパーも出せるわけがありません。核心はありませんが、こういうケースでは粉飾を疑ってしまいますよね。年商にもよりますが、1億や2億の年商がありながら期末の現預金が数十万円などの場合では、返済懸念(資金繰りの懸念)があります。業種や回収サイトによっては入金が決算をまたいで一次的に資金が少ないという理由があればまた状況も違うでしょうが、それでもボトムになる時期の資金が極端に少ない場合は融資に対して前向きになれないと思います。

5の既に多額の借入がある場合は決算云々というより、与信枠を超えてるような場合になるのでこれは約定弁済が進んでいけば可能性があるとは思います。現状では融資が難しいというケースですね。何らかの理由で売上が落ち込んで事業再構築している会社には良くあると思います。事業規模が大きい時点で借入しており、事業再構築によって売上が減少したケースです。適正な規模の借入まで返済を進めるか、売上を増加させることによってまた与信枠が開いてくる可能性はあります。

決算書の内容が融資審査で大きな配分があるのは確かです。財務内容が良ければそれだけ融資実行に近いのは間違いありません。しかし、それを一気に覆すだけの威力がある事もあります。一部を以下にご紹介致します。

  1. 代表者の信用情報に問題がる
  2. 税金の未納がある
  3. 事業に必要な許可を取っていない
  4. 反社情報に名前が載っている・ネットにネガティブ情報がある
  5. 通帳の動きが怪しい

1については過去に借入の延滞をしている方や、金融事故を発生させてまだ返済が終わっていない方が該当します。これはどうやっても保証協会を付けることは難しいでしょう。一時の延滞で既に解消されている場合は、しばらく時間が経てば借入も可能になるのですが、過去の借入を踏み倒している場合はその借入を返済してからでないとスタートラインに立てません。過去に会社を潰している方もたまにいらっしゃるのですが、借入を残したまま倒産させている場合は、極端な話、違う方を代表に立てた方が借入に関しては早いのではと思ってしまいます。

2.は基本的に納税証明を求められる場合にはバレます。毎回毎回出すわけではないのですが、初回の融資の場合はまず納税証明は求められます。税金の分納の申請をして、分納計画をしっかり立てている場合はそれも含めて審査が入りますが、単純に未納の場合はその時点で融資は難しいでしょう。

3は建設業などの許認可が必要な業種で無許可で事業をしている疑いがある場合です。建設業であれば500万円以上の契約書があれば無認可である事がすぐわかりますし、売上高に対してあまり金額の高くない少額の請求書などの疎明資料を出していると突っ込まれます。無許可営業と判断された場合は融資の承認は下りないでしょう。

4については前者は説明不要ですね。融資できません。後者のネットにあるネガティブ情報というのは代表者が詐欺で捕まったことがあるとか、詐欺情報が出ているとかの情報です。これは情報の信憑性を確認しなければいけませんが、一旦上席の判断を仰ぐことになると思います。

5については他行の通帳を見せてもらう事もないと思うのですが、預金取引を開始している顧客で事業内容が法人向けなのに個人から多数の入金がある場合は詐欺口座やマネーロンダリングの口座として使われている可能性が疑われます。実際のところどうかはわかりませんが、怪しまれている時点で口座の使い方を間違えていると思いますのでこれも融資できないケースとして紹介しておきます。

以上のように決算が黒字であるだけで借入ができるわけではないという事をわかっていただけたでしょうか。上記以外にもみられる項目はありますし、何かに該当しているからと言ってそれですぐ否決になるというものでもありません。(反社等の一発アウトの項目以外)融資審査は財務面や代表者の資質等の定性面を総合的に判断して承認がされます。もし何かしら懸念点があるようでしたら早いうちに対処しておくことをお勧めします。これさえ守っておけば大丈夫!という事もないのですが、なんにせよ信用が第一です。借りたお金を返してくれるという信頼感を相手に持ってもらえるようになる事が融資への近道だと思います。


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