長く事業をされてらっしゃる方は新たな金融機関から既存取引行の融資分を代わりに融資しますよという肩代わりの提案を受けたことがあるもしれません。新規取引金融機関は融資残高が欲しいので金利を引き下げて提案するのが主流だと思います。今までの金利から0.1%、0.2%はたまた0.5%金利を引き下げますといった具合です。
利息は企業にとっては経費ですから安いに越したことはないかと思います。しかし、取引金融との関係においては特に注意が必要です。
他行肩代わり=肩代わりされた金融機関とは実質取引解消
金利が安いからと安易に提案の飛び乗ってしまうと、上記の様に既存の金融機関とは取引が実質的に解消されるくらいのインパクトです。実際は預金口座は残りますので関係自体は残ります。しかし、融資に関しては実質的に取引解消となります。なぜなら他行を担ぐわけで、自行は梯子を外されるからです。一旦信頼関係が終了するようなものです。
数年経ってその支店の方がどんどん移動していった場合にまた一から融資が発生する可能性はありますが、履歴には肩代わりされた事は残りますので、そういう判断をする会社だという認識は共有されます。
肩代わりは借り手側でも良く検討する必要がありますが、金融機関側でもよくよく検討がなさればなければいけないと思っています。金融機関側は融資する責任を受け持つわけですから、資金繰りに困った時に従前の金融機関の代わりに支えなければならない責任が発生します。しかし、金融機関によっては傷口が広がる前にふさいでしまおうという姿勢のところもあります。ですのでお互いしっかりと、支援できるか・支援してもらえるかの信頼関係が築けるかがとても重要になってきます。
どういう時なら肩代わり提案を受けていいのか?
信頼関係という言葉は言うのは簡単ですが、具体的にどうという事も出来ない漠然としたものだと思います。その為考えだしたらキリがないのですが、一つの目安としては下記のようなときは肩代わり提案に乗ってもいいかと思います。
- 既存行が借りた後は全く顔もさず、ほとんど担当者も話したことがない
- あまりにも条件面が違いすぎる
- 社長が既に支援してくれなさそうだと思っている
- メガバンクから借りていてそもそも営業担当者がいない
- あり得ないミスや信頼を損なう対応が看過できない場合
1は信頼関係ができるまでコミュニケーションが取れていない場合です。貸したら貸しっぱなしの悪い例ですね。担当者が変わってこうなった場合はまた少し時間をあければその担当者が異動になるので、一旦我慢した方がいいと思います。その間はサブバンク等他行を利用して、担当が変わっても全然変わらないようであれば肩代わりしてもらってもいいと思います。
2は既存行の金利があまりに高い場合ですね。1%以上の金利差があって代表者保証取らない等の好条件が提示される場合はそもそも業況がいい会社だと思うので、好条件の提案に乗ってもいいかと思います。ただし、この場合でも肩代わりしてくれる金融機関ともその後友好的な関係が築けるかどうかは良く検討する必要があると思います。
3は1と似たような感じです。違いとしてはコミュニケーションは取れているけど、全然親身になって相談に乗ってくれなかったり、ドライな対応に終始されるといった場合です。1も3も担当者次第の場合も多いので、一旦は我慢した方がいいのかなと思います。しかし、担当者が変わってもそのままのようであれば、思い残すことはないと思います。
4はメガバンクならではかもしれませんが、窓口で融資を申込して、実行されてからも担当者がいまいち誰だかわからない場合です。これは仕方ないことなので、何か足りないなと感じてきた時点で信金や地銀と取引をすることをお勧めします。とは言え、規模をどんどん大きくしていきたい、借入も大きくしたいといった場合はメガバンクとの付き合いは必要になる時が来るので、その時まで付き合い切るのも一つです。
5は融資実行日と案内されていたのに実は稟議が通っていなかったとか、自分たちに都合がいいように色々と付き合いでサービスを利用しているのに、こちらの相談には全然乗ってもらえないだとか、あり得ないような事が起こって、どうにも怒りが収まらないときです。稟議が通っていないので融資実行日案内するなどあってはならないし、あるわけないと思いますよね。。実際あったんです。。。詳しくは書けませんが、事実としてこんなことも発生する可能性があるのです。こんな時どうしても許せない時に肩代わりの提案がちょうどあれば、それはもう肩代わりしてもらってもいいんじゃないかと思います。
1~5までご紹介しましたが、全然許せるしそんなの気にしないという社長はそのまま取引継続していただいて全く問題ありません。あくまでも個人的に信頼が築けないと感じた場合に肩代わりしてもらってもいいんじゃないかというシチュエーションを挙げたまでです。いずれにしても、いい条件で提案してくることが多いと思うので、わずかな金利差だけで提案に飛び乗る事がないようにしっかりとその金融機関の自社に対する取組方を観察して判断してほしいと思います。
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