金融機関からの借入の記事の事を書いているとつい黒字にすることが大事だといいがちになります。確かに赤字よりは黒字の方が見栄えもいいですし、対外的な評価も高いでしょう。しかし、事業経営をしていく中で予想外の出来ごとが起こって業績が悪化したり、設備投資による償却によって赤字になったりと様々な要因によって赤字になる事もあります。赤字になったからといって即座に銀行との融資取引ができなくなるわけではありません。それに使い方によっては赤字も悪いことばっかりではありません。
赤字でも感じられるメリット
赤字でのメリットとは何でしょう。以下ご参照ください。
- 法人税、所得税がかからない
- 過年度の赤字は繰越欠損金として、以後10年間利益から控除できる。
- 中小企業において前期黒字で法人税を納めている場合に法人税の繰戻し還付を受けられる。
1については赤字なので当然当期の税金はかかりません。
2については繰越欠損金が残っている限りは利益と相殺する事ができます。また古いものから充当していくので、数年赤字が続いている場合古いものから消えていきます。
3については赤字の中小企業かつ前期黒字という条件に当てはまれば還付を受けられるという制度です。
メリットらしいメリットはない
税金を払いたくないから赤字にするとはよく聞きますが、確かにその1点に関してはメリットといえるでしょう。上記3点も全て税金に関するものですしね。しかし、メリットに対するデメリットも非常に大きいとお思います。銀行の信用格付けに影響を及ぼすことはもちろん、赤字である以上、資金が社外流出していることは間違いありません。単年での赤字はそう大きな問題ではありませんが、それでも継続的に黒字である方が経営の安定性という意味で信頼感は違います。
何か赤字だからといって他にメリットがないか探してみましたが、これといってメリットになりそうなものはありませんでした。上場を目指す会社が敢えて赤字にして上場と同時に一気に黒字にするといった見せ方をする場合に印象の問題で赤字にしておくという使い方もあるようですが、一般的な中小企業の使い方としてはそぐわないかなと思います。
経費を過大に計上して敢えて赤字にすることは結局は無駄を生むようなものなので過度な節税を求めず、適度な節税でとどめておくことをお勧めします。
ただ、繰越欠損金を使って利益を圧縮できることは赤字の最大のメリットだと思うので、どうせ赤字にするなら一度に纏めて大きな赤字を作っておいて翌期以降の大きな黒字に備えるという戦略的赤字はいいと思います。金融機関の担当者がどう思うかは人次第なのですが、私はそういう話をする社長が結構好きでした。ちゃんと考えているんだなぁと思えたからです。結局は税金絡みの話なのですが、欠損金があれば、仮に全額控除しても黒字になるような場合でも税金の金額は減少させられます。資金繰りの観点から言っても少しでも出ていく資金が少ない方がいいですし、税金は売上を生む支出ではないので尚更です。
以上の様に赤字にも利用価値のあるメリットもありますが、全体で見たときにはデメリットが大きいという事を理解して、うまく利益のコントロールをしていってほしいと思います。
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