先日はデット・エクイティ・スワップ(DES)をご紹介しましたが、本日はデット・デット・スワップ(DDS)です。デットとかエクイティとかちょっと難しいですよね。言葉通りデットは負債。負債と負債の交換。しかしながらなんでもかんでも交換できるわけではありません。
何と何を交換する?
金融機関が貸出ている債権を他に貸出している債権に「劣後する債権」と交換することを言います。もっと噛み砕いていうと、劣後するというのは返済順位が後になるという意味です。ただ、返済しなくていいわけではなく、通常の長期融資と違い返済期日に一括返済となります。一般的にはいわゆる資本性劣後ローンというものに振り替えることをデットデットスワップといいます。
これをすることによって、金融機関側、借り手企業側双方にメリットがあります。まず借り手企業側のメリットです。
- 毎月の返済が入らないので返済負担が軽減される
- 上記の結果として、他の借入についての債務不履行を回避できる可能性が高くなる
- 資本としてみなされるので、自己資本比率が向上する。=債務者区分の改善の可能性
- 金利が低くなる
一方で金融機関側のメリットとしては、
- 債務者区分の改善の可能性
- いずれ元本回収は可能であり、その期間の利息も受け取れる
- 財務制限条項(コベナンツ)を設定する事ができ、経営再建に関与することも可能
以上の様に双方メリットがあります。しかし、デメリットもあります。
借り手からすると、金融機関側のメリットであるコベナンツが厄介になる事もあります。例えば「○○万円以上の設備投資には金融機関の同意が必要」だったり、「連続して赤字計上はしてはいけない」等の制限がついたりするのです。違反すると何らかのペナルティを課せられるので、企業側からすると自由度は下がります。また金融機関側では元本が全く回収できない可能性があるので、何かしらの保証や担保を求められる可能性もあります。
また多くの金融機関側では資本性劣後ローンを組んだ場合、その全額を貸倒引当金計上する事となり金融機関側の財務が痛んでしまうというデメリットもあります。
既存の借入を資本性劣後ローンに振り替えるにはまずは金融機関に相談に行き、審査をしてもらい、可決しなければDDSは実行できません。その為財務状況が悪すぎる場合は否決になる事もあります。
資本性劣後ローン
既にある借入金を資本性劣後ローンに切り替えることをDDSという一方で、最初から資本性劣後ローンを借入する事もできます。日本政策金融公庫では資本性劣後ローン制度を取り扱っています。以下日本政策金融公庫の商品です。
次の1および2を満たす法人または個人企業 | |
1 融資制度 | 次の(1)から(6)までのいずれかの融資制度の対象となる方 ①新規開業資金(注1) ②新事業活動促進資金海外展開・事業再編資金(注2) ③事業承継・集約・活性化支援資金(注3) ④企業再建資金 ⑤ソーシャルビジネス支援資金 |
2 その他条件 | 次のすべての要件も満たす方 ①地域経済活性化にかかる事業を行うこと。 ②税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること。 |
融資限度額 | 7,200万円(別枠) | |
---|---|---|
ご返済期間 | 5年1ヵ月以上20年以内 |
利率は当期利益を計上しているどうか、期間の長短によって決まりますが、黒字計上の場合は3.6~4.65%のの範囲、赤字計上の場合は一律0.5%となっています。
期間は5年1ヶ月~20年で、5年以上の期間が残っている場合は全額自己資本とみなされるのですが、期間が5年以下になると毎年20%ずつ資本とみなされる額が低減していきます。
資金調達の手段が制限されている中小企業では事業の基礎となる資本的性質の資金を負債の形で調達されている場合も多いといわれています。その為、資本性劣後ローンを利用することで、事業基盤を支える資金を一定期間返済することなく調達する事ができるのは非常にメリットだと言えます。ただし、他の融資制度に比べると審査が厳しいので、利用を検討するときはしっかりとした準備が必要でしょう。
まとめ
このように一般的には金融機関からの借入金を資本性劣後ローンなどの違う条件の借入に振替することをDDSといいますが、資本性劣後ローンは最初から借りれる場合もあるのです。資本的性質を持っている借入になるので、返済負担は軽減でき、自己資本としてみなされるので非常に財務改善には有効だと思います。しかしながら金融機関側からするとその全額を貸倒引当金に計上しなければならないのでそう簡単には取り扱ってはくれません。もし利用を考えるのであれば事業計画書や資金繰り表、改善計画書などそれ相応の書類は必要になってきます。ハードルは高いですが、メリットも非常に大きいので、しっかりと書面を作って金融機関に説明できるような体制を作れれば是非チャレンジしてほしいと思います。
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