中小企業において借入はある意味生命維持装置のような役割を果たしていると思います。少なうとも資金繰りが回っていれば会社が潰れることはありません。その中で借りれるだけ借りておくという方法も確かにあります。しかし、企業規模にあった借入額というものもあると思います。本日はその借入額と売上のバランスから見た借入可能額の判断について記載していこうと思います。
借入の適正値とは?
「借入の適正値」。一般的にこういう言葉があるわけではありません。私が今回のこの記事を書くにあたって表現しやすく記載したものです。要するに企業における借入の適正金額はどのくらいかという事なのですが、正直これは会社によって違うので、一概にどのくらいというものはありません。例えば製造業で設備投資で大きく借入をする場合もあれば、ほとんど借入しなくてもやっていける会社もあると思います。ただし、私も金融機関勤務時代はなんの基準もなく決算書を眺めていたわけではありません。一つの基準として見ていたのが、借入月商倍率という指標。いたってシンプルな公式で「借入金÷月商=借入月商倍率」で表されます。
私はこの借入月商倍率が3~4倍であれば借入余力があると思って見ていました。当時はもっとシンプルに年商の30~40%以内という風に思っていましたがまぁ同じようなものです。この指標はめちゃくちゃシンプルで売上を見ただけでサクッと暗算できるのでとても便利だと思います。そんな簡単なものなの?と思うかもしれませんが、借入余力を見る上ではそうかけ離れていないのです。余談ですが、金融機関の営業は人によって与信判断能力はマチマチなので、この指標に限らず何かしら自分の中で基準を持っている営業の方はどんなお客様でも対応がブレないと思います。しかし経験が浅かったり、あまり考えていない人だとお客様のいう通りの申請をして、結果減額承認であったり否承認だったりという傾向があるような気がします。決して自分も否決や減額がなかったわけではないのですが、可能な限り申請前に分析をした上で希望借入金額が難しいようであれば軌道修正させてあげる事も金融機関や財務コンサルタントとしての役目ではないかと思います。
借入月商倍率が3~4倍であれば借りられる?
決してそういうわけではありません。あくまでも売上を基準に借入余力を見たものにすぎないので、その他の項目でマイナス部分があれば否決になる可能性も十分あります。例えば不良資産がたくさんあって実質債務超過になっていたり、手元現預金が以上に少なかったりといったケースでは希望通りの借入ができない事も多いでしょう。ですがその逆に借入月商倍率が5倍でも借入できるケースもあると思います。それは下記のようなケースでは可能性は十分あるでしょう。
- 業績が好調で毎期売上が増加している
- 手元資金が潤沢
- 実現性の高い事業計画を作っていてそれを遂行している
- 今後の大きな案件が決まっていてその為の資金調達
- 担保提供している
総じて今後についてプラス材料がある場合に借入が多少多くなっても借りられる可能性は高いと考えます。一方で資金繰りに困窮していて追加で支援を希望されていても目先の支払いに資金が消えていき、またしばらくしたら資金繰りが厳しくなることがわかりきっているような場合は追加資金調達よりも逆に条件変更などで支払いを減らすことを考えた方が事業を継続する上では必要なことかもしれません。これはほんとに悩ましいところです。社長としては借入できればどうにかなるという想いもあるかもしれません。しかし貸すも親切・貸さぬも親切というように貸さない事が傷口を広げない為に必要と考える事がある事も知っておいてほしいと思います。
まとめ
大体年商の30~40%程度での借入金額であれば問題ないと思いますが、借入残高が年商の60%70%80%となるにつれて返済負担が非常に重たくなっていきます。設備資金の場合は期間も長くとれるので返済負担としては許容できるようになっていると思いますが、運転資金の場合は売上規模を上げていかないとどんどん危険水域に入っていきます。逆に年商の80%まで借入できるのはすごいという見方もできますが、借入できたとしても返済しなければならない事に変わりはありません。結局のところ資金調達、返済については計画的にという事になるのですが、一応借入余力の見方としては借入月商倍率というものがシンプルでわかりやすいというご紹介でした。絶対的なものではないのでこれ以上借りれもするし逆に借りれない事もありますが、一つ基準として持っておくと資金調達計画などは組みやすいかと思います。
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